「気温減率こそ・・・」のページの中で、「安定成層においては1000m上昇するごとに気温は6.5℃下がる」というお話をしました。しかし、これはあくまで成層が安定している場合です。もう少し噛み砕いて言うと、風が吹いていない状態で、地上の気温と1000m上空の気温を同時に測って比較するとその差が6.5℃あるということです。ところが、地上にある空気の塊が上昇気流によって強制的に1000m持ち上げられた場合、その空気塊の温度は6.5℃ではなく10℃(正確には9.76℃)下がります。この気温の減少率が「乾燥断熱減率」です。
空気塊は高度が上がると伴に「乾燥断熱線」に沿って気温が下がり、やがて飽和に達して凝結が始まります。この凝結が始まる高さのことを、「持ち上げ凝結高度」と言います。この高さは雲が出来始める高さ、すなわち雲底の高さに当たります。「乾燥断熱線」に沿って気温が下がるのはこの高さまでです。
凝結が始まると、気体から液体に変わる過程で潜熱を放出して大気を暖めます。つまり大気が暖められる分だけ気温減率は小さくなります。空気塊が凝結をしながら(雲をつくりながら)上昇していく時の気温減率を「湿潤断熱減率」と言います。ここからは「湿潤断熱線」に沿って気温が下がります。「湿潤断熱減率」は水蒸気の凝結量や周囲の気圧で変わりますが、典型的な数値としては1000m上昇するごとにマイナス5℃です。
空気塊が更に上昇を続けると、いつしか周囲の気温と等しくなります。この時の高さを「自由対流高度」と言います。この高さを過ぎても尚上昇が続くと、今度は周囲よりも気温が上がります。気温が上がれば空気は軽くなりますから、ここからは空気塊はひたすら上昇して行くことになります。つまり空気塊がこの「自由対流高度」まで到達することが、雲が「積乱雲」へと発達して行くための条件となります。