《飛行機雲ができるのはなぜ?・・・渦は低気圧なんです。》
雲の種類やその出来方についてはひと通り勉強した積もりでいましたが、「飛行機雲は何で出来るの?」・・・と質問されて、咄嗟に答えることがで出来ませんでした。
そこで改めて、「飛行機雲」が出来るメカニズムについて勉強してみました。
飛行機雲の種類は大きく分けて二つあるそうです。ひとつは、青い空を見上げた時に見える、直線状に長く伸びた雲。そしてもうひとつは飛行機の機体周辺の低圧部に発生する雲です。
1. 先ずひとつ目の、飛行機のエンジンの後方に出来る、白く長く伸びた直線状の「飛行機雲」について調べてみました。
航空機のジェットエンジンは、周囲から吸い込んだ空気を圧縮し、燃料と混ぜ合わせて燃焼させ、その勢いでタービンを回します。そしてエンジン内で作られた高温で高圧な排気ガスを、エンジンの後部から勢い良く噴射することで推進力を得ています。
航空機に使われる燃料は、灯油に近いケロシン系と、ガソリンに近いワイドカット系に分かれるそうですが、そのどちらの燃料の主成分も炭化水素です。一般に炭化水素とは炭素(C)と水素(H)の両方を含む物質を指します。この炭化水素(C〇H△)は酸素(O2)と結合(燃焼)することで二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に分かれます。(この場合エンジン内部の温度は300度~600度と言いますから、水ではなく沸点をはるかに越えた水蒸気ですね。)この二酸化炭素と水蒸気が高温高圧の状態で、排気ガスとしてジェットエンジンの後部から大気に向けて噴出されるわけです。
C〇H△ + O2 ➯ CO2 + H2O
安定成層における気温減率は1000m上昇する毎にマイナス6.5度。地上の気温が20度だとすると、ジェット機の飛ぶ高度1万メートルは、マイナス45度という冷えきった世界です。
高温に熱せられた多量の水蒸気がマイナス45度の大気の中に放り出されて一気に冷やされるわけですね。これが大気中のエアロゾル(凝結核)や、エンジンから一緒に噴出されたその他の成分の燃えかすと結びついて凝結、いえ、-45度なら間違いなく凝固です。そしてそれが飛行機雲として我々の目に見えるわけです。
しかし、いくら高度が高くて気温が低くても常に飛行機雲が見られるとは限りません。カギを握るのは上空大気の相対湿度(%)です。相対湿度は飽和水蒸気圧分の水蒸気圧。相対湿度が高いということは、大気が湿っていて、雲が出来やすい(若しくは出来ても消えにくい)状態にあることを意味します。もちろん高度が高ければその分気温も下がり、飽和水蒸気圧も小さくなって相対湿度も上がる訳ですから、雲が出来やすい状態に近付いていくのは確かですが、元の大気が乾燥していて飽和するにはまだいくらかの余裕があるとすれば、例え一瞬雲が出来たとしても、その雲は、周囲の乾燥した空気の中に吸い込まれて直ぐに消えてしまうのです。
逆に言えば飛行機雲が出来て、それがいつまでも消えずに残っていたら大気が湿っている(飽和に近い)証拠です。そのあと雲が広がってくる可能性は高いと考えられます。
2. 次はふたつ目の、航空機の機体の回りの低圧部に出来る飛行機雲についてです。
航空機の機体に沿って流れる風が、機体周辺のところどころに、気圧が低い部分を作り出します。
ここで、流体の中を翼が進むことによって、翼の周辺に発生する3つの渦について説明します。
1つ目の渦は、翼の上部が流体と同じ方向に流れるように、翼を軸として回転する『束縛渦』です。この「束縛渦」によって翼の上部では、下部に比べて流速が速くなり、低圧になることで揚力が発生、機体を持ち上げます。この時低圧になった翼の上面では、断熱膨張冷却により気温が低下し、翼の上に張り付くように飛行機雲が発生します。
2つ目の渦は翼の後方に出来る『出発渦』です。「出発渦」は「束縛渦」と対の関係で発生し、「束縛渦」とは逆の循環の渦を作ります。この「出発渦」は「剥離渦」とも言われ、渦の出来た場所に留まり、機体から遠ざかりながら周囲の空気を巻き込んだあと、次第に弱まって消えていきます。
そして3つ目の渦は、左右の翼の両端に発生する『翼端渦』です。翼の上下にできる気圧の差によって翼端の下面から上面に向かって、空気が流れ込もうとして出来るのが「翼端渦」です。
《渦が雲になる理由》
渦は回転運動ですから、遠心力によって渦内部の空気は外側に追いやられます。その結果渦の中心付近では、気圧が低くなると考えられます。上昇流が存在しなくても回転運動によって気圧は下がる訳です。
気圧が下がれば断熱膨張冷却によって気温も下がり、空気が湿っていてエーロゾルが浮遊しているという条件が揃えば、凝結が始まり、渦の内部では飛行機雲が発生します。
そして、このようにして作られた飛行機雲は、遠心力によって渦を描きながら外側へと広がって行くのです。
これらの、機体周辺の低圧部に出来る雲は、 特に大きな揚力が必要な飛び方をした時に発生します。 航空力学における揚力とは、気圧の高い方から低い方へ飛行機を吸い寄せる力です。揚力が大きいということは、翼上部の気圧がそれだけ低いことを意味します。高いGの掛かる急旋回をした時や、フラップを目一杯出して翼の面積を大きくした離着陸時などに、揚力が大きくなり、これらの雲が出来るそうです。空港などに行けば見られる機会はあるかも知れませんね。
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