【空はなぜ青い?空が青い本当の理由】
「空はなぜ青い?」その理由は「赤い光よりも青い光の方が散乱しやすいから?」・・・でも、太陽が放つ可視光の中で最も散乱しやすいのは紫色なんです。
『空が青い本当の理由』
- 「空はなぜ青い?」
- 「散乱とは?」
- 「地球はレイリー散乱の場である。」
- 「波長依存性から生まれる3つの疑問」
- 疑問①最も散乱しやすい色が空の色になるのなら、空は青色ではなく紫色に染まるのではないでしょうか?。
- 疑問②なぜ太陽そのものは青く見えないのでしょうか?レイリー散乱の持つ波長依存性によって、太陽光が散乱を起こした結果空が青く染まるのなら、同じように太陽そのものも青くなり空に溶け込んでしまうのではないでしょうか?
- 「夕焼け空はなぜ赤い?」
- 疑問③青い空から赤い空に移り変わる過程で、その中間にあった筈の緑色や黄色の空は何処へ行ってしまったのでしょうか?
- 「これが空が青く見える本当の理由」《光と色の三原色》
- 《3つの疑問を解決、だから空は青い。》
- 「雲が白く見える理由。」
- 「夕焼けが綺麗に見えると、なぜ次の日は晴れると言われるのでしょうか?」
「空はなぜ青い?」
子供の頃母親に、「空はなんで青いの?」と質問した事があります。すると母は「赤い光よりも青い光の方が散乱しやすいからよ。」と教えてくれました。
「散乱」という言葉の意味を全然理解できていなかったその頃の私は、光が散らばる様子を頭の中に思い浮かべようとしましたが、現れた映像はどれも漠然としたものばかりで、空が青い理由などには決して辿り着くことが出来ず、何となく母にそれ以上質問を繰り返すことも無く、もやもや感を残したまま長い歳月を過ごして来てしまいました。
空の青さを説明するのに「散乱」は必ず登場する言葉です。「散乱」から枝分かれして登場するのが「レイリー散乱」、これは更に重要な言葉なのですが、この言葉が登場すると話がいきなり難しくなった気がして、ついつい私はこの話題をずっと遠ざけて来てしまったのです。
そんな訳で長年の宿題となってしまった「空が青い理由」を今改めて追求するにあたって、先ず「散乱」について、どの文献にも載っている内容を簡単にまとめてみようと思います。
「散乱とは?」
「散乱」には「レイリー散乱」と「ミー散乱」があります。「レイリー散乱」は光の波長に対して、衝突する対象物がとても小さい場合、「ミー散乱」は、衝突する対象物が波長と同程度かそれ以上に大きい場合を言います。
そして「レイリー散乱」には波長依存性があります。波長依存性とは、波長が短いほど散乱しやすく、波長が長いほど散乱しにくいという性質です。散乱のし易さは波長(λ)の4乗に逆比例します。それに対して「ミー散乱」は波長依存性を持たず、どの波長でも均一に散乱するという性質があります。
簡単にまとめた積もりですけど、それでも何度繰り返して読んでも頭に入って来ないというか、それが空の青さとどういう関係があるの?って感じしますよね。そもそも衝突する対象物が「とても小さい」とか「同程度」とか、基準が曖昧過ぎると思いませんか?
それでは、気を取り直してこれより、なぜ空が青いのか、その理由の解明に挑戦して行きたいと思います。
「地球はレイリー散乱の場である。」
先ず最初に認識しなければならないのは、「散乱」は「太陽から放たれた光(波動)が物質と衝突して初めて起こる現象である。」ということです。物質に衝突した光は四方八方に散らばり、散らばった光はまた次の物質にそれぞれ衝突して散乱を繰り返して行きます。こうして散乱を繰り返せば繰り返すほど光は弱まって行くのです。
次にその「散乱」を起こさせる物質について説明します。
我々の住む地球は、厚みがおよそ100kmの大気に覆われています。

その大気成分中1番多いのが窒素(N2)で約78%を占めます。2番目が酸素(O2)の約21%、 3番目がアルゴン(Ar)で約0.93%、4番手は二酸化炭素(CO2)の約0.03%と続いて行くのですが、これら4つの成分だけでも既に99.96%と地球大気のほとんどを占めてしまいます。
さて問題はこれらの分子の大きさです。資料によっては表現方法が異なったり、大きさの違いに多少差があったりもしますが、重要なのは太陽光の波長に比べて、これらの分子が如何に小さいかを確認することです。これら4つの成分の直径はどれも似たり寄ったりで、いずれの資料にも0.3nm〜0.4nm程度であると書かれています。この大きさの分子が地球全体をぎっしりと覆っていると考えられます。
※ちなみに1nm(ナノメーター)は0.000001mmです。勿論目には見えません。
これに対して、太陽が放つ可視光線の波長領域は380nm〜780nm、つまり地球を包む大気分子の直径は、その約1,000分の1〜2,000分の1程度ということになります。これだけ大きさに差があるのなら、大気成分は光の波長に対して十分小さいと認めても良さそうです。・・・大きい小さいは相対的な言葉なので曖昧感は残りますけどね。
「レイリー散乱」は光の波長に対して、衝突する対象物がとても小さい場合に起こる現象だと定義していますから、地球を包む大気成分のほとんどが太陽光に対してレイリー散乱を起こさせている、すなわち地球全体がレイリー散乱の場であると理解出来るのです。
「波長依存性から生まれる3つの疑問」
雨上がりや雨の降っているところに太陽光が差し込むと、その角度によって虹が現れることがあります。虹に見られる色の変化は波長の違いによるものです。
プリズムレンズを太陽光にかざすと、その反対側に、波長の違いが作り出すそれぞれの色を見ることが出来ます。
可視光領域では波長の一番短い紫色と、一番長い赤色の間にその他の全ての色が存在します。レイリー散乱における波長依存性は、波長が短い程散乱しやすいと説明していますから、この中では紫色が他の色に比べて一番散乱しやすいことになります。散乱のし易さが波長(λ)の4乗に逆比例するとして計算してみると、紫色の波長(380nm)は赤色の波長(780nm)の約17.75倍も散乱しやすいことになります。
それぞれの色の散乱強度を長さで表現してみました。
色による散乱強度の違いが一目でわかると思います。一番散乱強度の強い紫色が、他の色に比べて一番長く伸びています。
しかしここで一つの疑問が生まれます。
空が青い理由は「赤色よりも青色の方が散乱しやすいから」と母は教えてくれました。
疑問①最も散乱しやすい色が空の色になるのなら、空は青色ではなく紫色に染まるのではないでしょうか?。
ところが空は青く見えます。紫色を示す波長領域は一体何処に消えてしまったのでしょうか?
紫外線を吸収すると言われるオゾン層が紫色の波長も吸収してしまったのでしょうか?
それとも、紫色はあまりにも散乱が激し過ぎて、我々の目に到達する前に消えてしまったのでしょうか?
しかしどちらも正解では無さそうです。オゾン層が吸収する紫外線は100nm〜280nmのUVCと280nm〜315nmのUVBの一部です。それよりも波長の長い315nm〜可視光までのUVAと、UVBの一部は地表に向かって降り注ぎ、日焼けの原因となります。
言い換えれば、我々が日焼けをするということは紫外線が届いている証拠です。紫外線が届いているなら、それよりも波長の長い紫色も当然届いていることになるからです。
次に第二の疑問です。
疑問②なぜ太陽そのものは青く見えないのでしょうか?レイリー散乱の持つ波長依存性によって、太陽光が散乱を起こした結果空が青く染まるのなら、同じように太陽そのものも青くなり空に溶け込んでしまうのではないでしょうか?
さて、これらの疑問を解明して行く前に、夕焼け空がなぜ赤く染まるのか、その理由を探りたいと思います。
「夕焼け空はなぜ赤い?」
・・・夕焼け朝焼けが真っ赤になる理由。
夕方や朝の早い時間帯に空が赤く染まるのはなぜでしょうか?これは太陽の高度角が関係しています。太陽が頭の真上にある時と、水平線や地平線の近くにある時では、太陽光が通過して来る大気の厚みが違います。
太陽が真上にある時は、大気の厚みはおよそ100kmになるのは解りますが、では水平線や地平線の近くにに見える時は果たしてどのくらいの厚みになるのでしょうか?
地球の半径を6,400km、大気の厚みを100kmとして計算してみると、通り抜ける大気の厚み( X ) は、なんと1,136kmにもなります。
繰り返しますが、レイリー散乱の波長依存性は、波長の短い光は散乱しやすく、波長の長い光は散乱しにくいと説明しています。真昼の時の11倍を超える厚い大気を通り抜ける間に、波長の短い光は散乱を繰り返すことでどんどん弱まってしまい、散乱しにくい波長の長い光が大気をすり抜けて我々の目に届くのです。それが夕焼け、朝焼けが赤く染まる理由です。まさしくレイリー散乱の持つ波長依存性が成せる技と言えます。
しかし、ここで第三の疑問です。
疑問③青い空から赤い空に移り変わる過程で、その中間にあった筈の緑色や黄色の空は何処へ行ってしまったのでしょうか?
太陽の高度角が傾き、通り抜ける大気の厚みが変化して行けば、その途中で緑や黄色の空が現れても良いのではないのでしょうか?
「これが空が青く見える本当の理由」《光と色の三原色》
我々が生活の中で目にする、ペンキや絵の具などのいわゆる色の三原色は、シアン(青緑)、マゼンタ(赤紫)、イエロー(黄)で構成されます。これらの色は色同士が混ざり合う度に暗い色に変わって行き、全て混ぜ合わせると黒に近い色になります。
ところが太陽光が放つ光の三原色は、色の三原色とは異なり、RED(赤)BLUE(青)GREEN(緑)で構成されます。光の三原色では異なる色同士が混ざり合う度に何故か明るくなって行きます。そして全てが混ざり合うと不思議なことに白くなってしまうのです。ミラクルですよね。
この光の三原色のミラクルな特徴を踏まえた上で、3つの疑問を解明して行こうと思います。
《3つの疑問を解決、だから空は青い。》
我々人間の目にプリズムレンズの機能はありません。太陽が放った異なる波長の色を、それぞれ単独で捉えることは出来ません。散乱した全ての色が混ざり合って出来たただ一色を我々の目は捉えているのです。簡単に言えば、これが全ての答えになります。これより詳しく説明します。
先ず最初に、第ニの疑問である昼間の太陽が白く見える理由です。
太陽に向かって真っ直ぐに目を向けた時には、散乱した光も散乱してない光も全ての光が同時に目の中に入って来ます。
光の三原色では全ての色が均等に混ざり合った結果白くなるのですよね。それが太陽が白く見える理由です。
続いて第1の疑問です。何故空は紫色にならないのか?
太陽を除いた空の部分だけを見た時は、散乱した光だけを見ることになります。
散乱していない光は通過してしまって見えません。
我々の目が捉えるのは、それぞれの散乱強度で散乱した光が全て混ぜ合わさった色なのです。
可視光を7つの色で分けた場合、1番散乱しやすいのは紫色です。続いて藍、青、緑、黄、橙、赤の順で散乱します。光の三原色では色が混ざり合えば明るい色に変わっていきます。実際どの色とどの色を混ぜ合わせたらどんな色になるのか、我々にとって言い当てるのは至難の業ですが、散乱しているこれら全ての光を混ぜ合わせた結果、空は何故か青くなるのです。これも正しくミラクルですね。
3番目の疑問である、空が緑色や黄色にならない理由も紫色にならない理由と同じです。
母は、「赤よりも青の方が散乱しやすいから、だから空は青く見える」と言っていました。
しかし、青色の光だけが単独で散乱して、そのまま空を青く染める訳ではありません。全ての波長の光がそれぞれの散乱強度で散乱し、混ぜ合わさった結果、光の三原色の下ではその一色がただ偶然青かったのです。
だから緑色や黄色だけの空を見ることなんて有り得ないのです。
また、太陽が傾いて光の通り抜ける大気の厚みが増せば、散乱のしやすい色はそれだけ弱まって、散乱しにくかった色が遠くへ届きます。言い方を変えれば、およそ100kmという大気の厚みは、太陽光がレイリー散乱をした結果、空が青色に見える丁度良い距離だと言えるのです。
・・・だから空は青く見えるのですね。
「赤い光よりも青い光の方が散乱しやすいから空は青い。」ではなくて、「赤い光は青い光よりも散乱しにくく遠くまで届くので夕焼けは赤くなる。」なら理解出来ますよね。
「雲が白く見える理由。」
雲を構成している雲粒(水滴の粒や氷の粒)は、その半径が0.001mm〜0.01mm(1000nm〜10000nm)と言われます。可視光領域の光の波長は380nm〜780nmですから、雲はミー散乱の場となります。ミー散乱には波長依存性が無く衝突する対象物が波長と同程度かそれ以上に大きい場合、どの波長でも均等に散乱しますから、全ての波長が均等に混ざり合うことになります。
光の三原色では全ての色が混ざれば白くなるので、雲は白く見えるのです。
時折り、白ではなく灰色の雲を見ることがあります。周囲は暗くなり、今にも雨や雷が落ちて来そうな不気味な空模様です。雲が暗くなるのは、雲がそれだけ発達して背が高くなり、その厚みのせいで太陽光が届きにくくなるからです。
「夕焼けが綺麗に見えると、なぜ次の日は晴れると言われるのでしょうか?」
西の空が夕焼けに染まるということは、日本列島の西側に夕陽を遮る雲が無く広範囲に晴れていること、つまり高気圧の存在を意味します。
日本列島の上空には偏西風が流れていて、その偏西風が西から天気を運んで来ますから、西側に晴れた領域(高気圧)があれば、その領域はやがて日本にやって来ます。これが夕焼けの次の日は晴れると言われる理由です。
逆に夕焼けが見られないということは、沈もうとする太陽と日本列島との間に夕陽を遮る雲、すなわち低気圧が存在することを意味します。
また、朝焼けが見られる時は日本列島の東側に高気圧があると考えられます。高気圧と低気圧は交互にやって来ることを考えれば、東に高気圧があれば、西から低気圧が近づいて来ることが考えられます。
低気圧が日本の西側にあれば、天気は下り坂に向かうと予想されるのです。
しかし夕焼けの次の日が必ず晴れるとは限りません。偏西風が蛇行して日本列島から外れることもあります。予想外に低気圧が発生、発達することもあります。夕焼けが見られなくても次の日が晴れることだってありますから、まあ、どちらかと言うとそんな天気になるのかなあ?くらいに考えておけば良いのではないでしょうか?
一言で空が青いと言っても空全体がいつも同じ青色に染まるわけではありません。真上は濃い青色でも高度が下がって行くと水色に近かったり、もっと低くなると黄色味を帯びていたり。太陽の高度角や大気の状態、波長による散乱強度の違いなどあらゆる条件が重なり合って空の色は微妙に変化するのですね。