『エルニーニョ現象とは。』
南米ペルー沖の海面水温が平年よりも高くなり、その状態が半年経っても続いている状態をエルニーニョ現象と言います。
このエルニーニョ現象は、赤道上空を流れる偏東貿易風が弱まった時に起きると言われています。
貿易風はその強い東風で、赤道域の暖かい海水を太平洋の西側へと運びます。それにともなって、太平洋の東側では海の底から冷たい海水が湧昇してきて、海面水温を下げます。
しかしこの貿易風が弱まることで、西側に向かう海水の流れが弱まり、ペルー沖合いの海底から湧昇してくる冷たい海水の勢いも弱まります。
また、貿易風によって太平洋の西側に吹き寄せられた暖かい海水は、フィリピンやインドネシア沿岸に到達した後、貿易風が弱いためにUターンして太平洋の中央に戻って来ます。その結果、東西両方向から暖かい海水が押し寄せる形となり、太平洋赤道域の西側にあった最も暖かい海水域が、太平洋の中央に移動してくるのです。
つまり、積乱雲が発達しやすく、熱帯低気圧が発生し易い海域が太平洋の西側ではなく日付変更線のあるあたりの太平洋のど真ん中に移動してくるのです。
『エルニーニョ現象が起きると日本にどんな影響があるの?・・・冷夏と暖冬?』
<冷夏>
太平洋赤道域の最も暖かい海水域が東に移動することで、フィリピンやインドネシア付近の海では普段の年に比べて海面水温が下がります。その結果本来活発であった上昇流に伴う積乱雲の発生が弱まり、その影響を受けてチベット高気圧や太平洋高気圧の勢力も弱まります。太平洋高気圧の張り出しが弱くなると、日本列島は、太平洋高気圧の西側の縁を通る南からの暖かく湿った空気の通り道となり、また、太平洋高気圧の勢力が弱い分、北からオホーツク海高気圧が張り出してくるため、梅雨前線がいつまでも停滞し、梅雨が明けにくくなります。
その結果日照時間が短く気温も上がらず、野菜や果物の生育に影響が出たり、またビール、アイスクリーム、冷房器具などの売り上げが伸びず、夏のレジャー産業も打撃を受けることになります。
<暖冬>
冬のフィリピンやインドネシア付近の海域は本来なら気温が高く低気圧が多く発生する海域です。しかしエルニーニョ現象が起きると、このあたりの気温は相対的に低くなるために下降気流が発生しやすく、高気圧に覆われることが多くなります。この高気圧が発達して偏西風を北側に押し上げ、シベリア高気圧の寒気が南下してくるのを妨げます。また、冬季に定常的に現れるアリューシャン低気圧も勢力を増し、シベリア高気圧を引っ張るかたちになるので、寒気はさらに南下しにくくなります。
その結果、西高東低の気圧配置が弱まり、日本付近は暖冬傾向になると言われています。
暖冬になると、日本海側では比較的晴れの日が多くなり、降雪量が減るためスキー場では雪不足になります。太平洋側では南岸低気圧の発生回数が増えて、大雪や大雨が降る機会が増えると言われています。
エルニーニョ現象は、世界各地で報道されている異常気象の原因のひとつとされていますが、その発生メカニズムについては、貿易風の強弱が関係していると言われているだけで、詳しいことは解明されてはいません。また日本においても、エルニーニョ現象が発生したからといって、必ずしも冷夏や暖冬になるという訳でもありません。あくまでもその傾向があるというだけなんです。